この世の中にはデザインと名のつくものがけっこうありますが、それらの中でもグラフィックとつくと、どうしてもイラストと混同してしまう方も少なくありません。
同じように感じてしまいますが、この違いはまずグラフィックデザイナーとイラストレーターの相違点を理解すれば納得できるのではないでしょうか。
広告業界ではその広告物自体をデザインする事
グラフィックデザイナーという肩書を持つ方は、主に広告制作会社などで働いています。グラフィックデザイナーのそこでの役割は、たとえば新聞広告や雑誌広告を始め、ポスター、カタログ、DM、チラシ、リーフレット、名刺などの制作に携わる場合がほとんどです。デザインという形を使って情報やメッセージを多くの人々に伝えるのがこのグラフィックデザイナーの主な仕事になります。
平面の印刷物を作る場合、昔は版下を手作業で作っていました。紙焼きしたものを切ったり貼ったりして作っていたわけですが、今はグラフィックソフトというものも一般的になり、これを使いこなして制作しています。しかし、これはあくまでも広告の中のいわゆる紙媒体での仕事であって、広告には他に電波媒体というものもあります。こうした電波媒体で広告を制作する人はデザイナーとは言わず、CMディレクターやCMプランナーなどと呼ばれているわけです。
紙媒体の広告を創るとき、そこに入るコピーや写真、またはイラストなどをデザインするのがグラフィックデザイナーの基本的な仕事になります。
イラストレーションは絵を始めグラフや図などをさす
次にイラストレーターですが、これはもう多くの方が理解している通りイラストを描く人を言います。この職業本来の意味では、情報や概念を視覚化してそれをイラストという形にすること。たとえば小説などの挿絵などを始め、テキストなどで文章を説明するための図版などもそうです。
そのような絵以外にもグラフや図などを指すこともあります。イラストを描く人と単純に言ってしまうと、どうしても芸術家として作品を作る画家などと同一視してしまうこともあるでしょう。しかし、両者には決定的な違いがあります。それはイラストレーターはどちらかと言えば商業イラストを描くことを生業としている場合が多いからです。確かにイラストレーターという肩書を持って様々なメディアに登場している人もいますが、それはほんの一握りと言えるでしょう。
また、イラストレーションというソフトがありますが、これは何もイラストを描くためのソフトというわけではなく、図形やロゴマークなどを制作するために使われるわけで、どうしても両者を混同して考えてしまう方も少なくありません。
今はイラストを描くグラフィックデザイナーもいる
グラフィックデザイナーとイラストレーターでは、両者には以上のような相違点があるわけですが、近年ではイラストも手掛けるグラフィックデザイナーも非常に多くなりました。本来はイラストレーターとして活躍したいと願う人も、生活をしていく上では広告制作会社などへグラフィックデザイナーとして入り、そこでデザインをしているという人も多いです。
今の世の中ではイラストだけを描いて生計を立てるのは難しいと言えるでしょう。確かにイラストレーターとして世間的に名の知れた人もたくさんいます。しかし、それらの多くはやはり元々広告制作会社などでグラフィックデザイナーをしていたり、アートディレクターをしていたり、またはクリエイティブディレクターを兼務していたりします。こうした仕事をやりつつも、イラストを描いていたわけです。そうした地道な努力が実を結んだのでしょう。
グラフィックデザインとイラストレーションの違いですが、これは一概に両者が違ったものであると言い切ることは難しいです。なぜならば、このイラストレーションというものは、実はグラフィックデザインの中の分野でもあるからです。