これから美術系の学部や学科、専門学校に進学する方は美大と専門学校の違いをよく知ってから進学の選択をしたほうが良いでしょう。
それは美大(短大も含める)と専門学校の性質が大きく違うからです。それらの長所・短所を理解してこれからの進学や就職を考えるようにしましょう。ここではそれぞれの違いについて解説します。
美大とグラフィックデザイン学校(専門学校)の違い
美大と専門学校の大きな違いは「目的」にあります。大学は短大でも一般教養の過程があります。そして専門科目を学ぶなら3年目(短大は2年目)となります。実践課程が始まるのが少し先ということになります。
最近は若干カリキュラムも変わってきましたが、基本的スタンスは変わりません。ただしこの一般教養課程というのは社会に出た後に役に立つとされ、どちらかというと美術系の即戦力(いわゆるクリエイターと呼ばれる人材)育成よりも学術的な理論教育を最初に行います。
一方で専門学校全般は「即戦力」を目的にしています。例えば社会人が専門学校に行く理由の多くがスキルアップや転職です。高校卒業から専門学校に行く場合は、就職後に必要なスキルを身に付けるために就職に有利な専門学校に行くケースがほとんどです。
もちろん「就きたい職業」に就くために専門学校を選ぶはずですが、実務職に就くケースが多いと言えます。実際にプランを考えるよりも手を動かして仕事をしたい人に向いています。
美大と専門学校のそれぞれの就職先
就職お話をする前に、それぞれの学位や称号について少し説明しておきましょう。大学を卒業すると学士という称号がつきます。一方で専門学校は何の称号もないわけではありません。2年の専門学校で1,700時間以上の過程を卒業していると「専門士」、4年で3,400時間の過程を卒業すると「高度専門士」と呼ばれます。
なぜご紹介したかというと「高度専門士」の称号があると大卒と同等とみなされ大学院の入学資格を得ることができるからです(専門士は短大卒同等で大学に編入可能)。大学受験までに学力が足りなくても、専門学校で学ぶことでしっかり学力をつけることが可能です。
しかも4年生の専門学校なら大学院にも入学できる可能性があります。多くの美術系(グラフィック系)の専門学校はこれに対応しています。それぞれの就職先は大学卒業であればデザイン職、クリエイティブ職、企業の総合職や教師という場合もあります。専門学校は専門職として専攻に応じた就職先が多いようです。
服飾メーカーならパタンナーやデザイナー、デザイナーとしてプロダクションに就職する、会社に就職する方も大勢います。どのように違うのかというと、大卒がクリエイティブ職種でも総合職に近い仕事に就くことが多い一方で、専門学校は実践技術を生かした就職先が多いということです。どちらもその方の選択次第ということです。
職種によっても進学先が違う
就職先に圧倒的な差がでるのが広告代理店や大手制作会社への就職です。実際は大手企業の広告宣伝部でディレクターやプロデューサーになる場合は美大卒が圧倒的に多い職種です。ただし最近は大手の代理店系列の制作会社でもWEBや映像制作、CD制作の仕事が非常に増えているので専門学校でも多くの人材が募集されています。
大学では教育されなかった分野が専門学校ではなされていることもあるので、即戦力としてニーズがあります。プロダクトデザインやインテリアコーディネーターなら、就職するときは大卒が優遇されますが、実際にフリーで活躍されている方は大卒とは限りません。
つまり大手企業に就職する場合は大卒が有利なものの、現状フリーで活躍している方、デザイナーとして一線で活躍されている方は大卒とは限らず、専門学校卒の方が数多くいるということです。何を学びたいか、何を目指したいか、向こう10年の間にどの程度スキルアップしたいかによって選ぶ学校が変わります。
ぜひ参考にしてみてください。